奴隷状態からの脱却は……


by meisou22

世相のウラを読む (133) 日本軍シベリア抑留兵士の悲劇

 歴史認識というものは時代と共に変わるものである。しかし、それが大幅に変わる事はめったにない。特に第二次世界大戦以降の現代史については、膨大な文書の形で資料が残されており、また数少なくなったとはいえいまだ時代の生き証人たちが生存しているから、それほど大きな変更があるとは誰しも思わないだろう。
 ところが、どうも大幅に歴史認識を変えざるを得ないような事態になりそうなのである。他でもない、前回発表した「ヴェノナ文書」の存在である。旧ソ連とアメリカ地下秘密共産党組織との暗号電報のやり取りが、記録として残されていた、というのである。記録は4,300のファイルにまとめられた大掛かりなもので、1995年に公開されてから10年以上が経過したが、いまだに読み込みが続けられているという。その内容・経過については前回公開した通りである。
 だが、それにしてもこの文書は途轍もないものである。この文書の重要なところは、単なる個人ではなく組織として歴史にかかわった、ソ連邦ロシアとアメリカ(地下組織といえども政権内に大きな勢力を有し、上下両院では民主党左派リベラルとして活動を続けていた事を考えると、この暗号電報のやり取りの記録は、公式の国家間の意見交換文書とみて差し支えない)の陰謀がすべて記録として残されていることだ。そしてそれから導かれるものは、例のマッカーシーの「共産中国はアメリカがつくった」という著書の正当性である。それまで「赤狩りのマッカーシズム」は、何の根拠もないデッチ上げで、アメリカ戦後処理の暗部を示す胡散臭いものとして、不当な扱いを受けてきた。それはアメリカ以上に日本でそういう認識が定着していた。
 前置きが長くなった。本題に入ろう。第二次世界大戦の終戦を間近に控えた戦後処理の段階で、アメリカは執拗にソ連の参戦を要求した。これは「ヤルタ協定」に基づくもので、ルーズヴェルトの悪評高い密約として有名なものだが、真実はマーシャルの策謀によるものだ。ソ連はその時には東シベリアに約三十個師団を抱えていたが、ソ連はヨーロッパ戦線でドイツと直前まで戦火を交えており、東シベリアでは軍の装備が決定的に不足していた。ルーズヴェルトは終戦直前に死亡、あとをトルーマンが継いで爾後戦後処理に当たった。何も分からないトルーマンはマーシャルの言いなりであった。
 要するにソ連軍は極東においては攻撃態勢が整っておらず、参戦する意図がなかった。それを、アメリカはソ連参戦を実現するために極東軍用に80万トンに及ぶ装備を提供してまでソ連に参戦を執拗に迫った。そして、ソ連極東軍は師団を西部からシベリアに移し、アメリカに招かれて一切血を流す事なく満州に侵攻を開始した。そのころには装備が万全になっていたのである。何のためにマーシャルはそこまでしてソ連の参戦を画策したのか。
 この事が何を意味するかをマッカーシーは先に挙げた自著で述べている。「かりに、そして理に適った推測だが、極東戦線への参戦を頼まず、軍備増強に手を貸さず、満州占領の権利を与えないという対ロ戦略を取っていたら、1945年8月10日に突然日本がポツダム宣言を受諾したとき、どこかでロシア軍の姿を見る事が出来ただろうか?・・・そうすると(ソ連参戦がなかったなら)、当然ながら現在の極東情勢は次のようになっていたはずだ。
1. 満州の日本の関東軍が投降した相手はロシア軍ではなく米国軍と蒋介石軍になったことだろう。
2. 米国は満州ならびに朝鮮人のための朝鮮を獲得し、やがて当地の占領軍としてすんなり台湾軍が来たことだろう。終戦時点での満州には秘密諜報員以外に共産主義者はいなかった。日本軍は自国の勢力範囲内にそうした敵が潜むのを許さなかったからだ。
3. 満州の主権が日本から中国にすみやかに移されたならば、満州の大工場群はロシアの略奪や破壊をまぬかれて、無傷で残ったことだろう。
4. 満州の豊かな農産物は中国の貧民救済のために有効に使われたはずだ。
5. 省略
6. もし、シベリアと満州との国境から離れてロシア赤軍が陣取ることになったならば、ロシアが延安の共産主義者を支援するという脅威はほぼ消滅したことだろう」
 このあと、マッカーシーは読者にこう問いかけている。
「1945年8月に米軍が極東に莫大な兵力を展開していたら、米国と中国の同盟軍が関東軍の降伏を受け入れた時点で、ソ連はあえて満州に侵攻しただろうか。答えは自明である。1945年8月に満州からロシアを締め出しておきたかったならば、どんな手でも打てたはずだ。だが米国はロシアの締め出しは望まなかった。むしろロシアを招き入れた。・・・」
 注意して欲しいのはここでいう中国とは、国民党の蒋介石率いる中国であって、毛沢東・周恩来の共産軍ではない。この時、中国についての白書を現地から大統領に報告しているが、その中にこんな記述がある。「・・・政府軍(もちろんここで言う政府軍は蒋介石の軍である)は―――共産軍に対して5対1の割合で勝り、重装備や輸送を実質上独占し、空軍で圧倒していた。」
 その上、マッカーシーはこう告発している。「だが、もっとたくさんの(アメリカからの政府軍に対する)物質的支援があってしかるべきだった。・・・(中略)・・・米軍上層部は・・・ベンガル湾に12万トンの軍需物資を投棄させた。その多くは・・・中国に対する武器供与の勘定に入っていたものである」
 こうしてマーシャルは蒋介石の中国政府軍を軍需物資で逼迫させた上で、さらに共産軍を攻撃し続けるならアメリカの支援を打ち切ると脅し、赤軍にはウラでロシアからの物資の支援ルートを確保させている。関東軍の残した武器弾薬は無論赤軍のものとなった。これをえこひいきと言わずして何というのか。このように中国本土において(特に満州において)中国赤軍を支援し、後の「中華人民共和国」を成立させたのはアメリカであり、旧ソ連ロシアを満州に侵攻させ、関東軍のシベリア抑留の悲劇を招いたのは他ならぬアメリカであった事が歴史上の厳然たる事実であったことが理解されよう。
 さらに、私は、1977年4月発行の岩波講座「日本歴史(全26巻)」現代1の中にこういう記述があるのを知っている。~対日占領政策の形成と展開~―――「・・・さらに注目すべき事は当時千島列島の範疇が不明確であったことである。つまり千島列島と北海道の境界が必ずしも明確ではなかった。因みに、進駐して来たソ連軍は択捉(えとろふ)水道を前にして停止し、択捉、国後、歯舞、色丹の四島は数日間様子をうかがい、米軍が入ってこないのを確かめてから進駐してきた・・・」―――これが今日の北方領土問題の根源であるが、これもアメリカの不可解な対応が原因となっている。つまりアメリカの不作為が今日の北方四島領土問題のおおもとを作ったことになる。
 それと、一体当時の知識人は日本人として何をしていたのか。この時代の思想的背景は東京大学が大きな役割を担っていたことは、立花隆氏の「天皇と東大」(上下二巻)に詳しく記述されているが、戦後十数年して発刊された東京大学出版会の「日本歴史講座」(全八巻)の第七巻、~戦後十年史~の中に、第8章・戦後の平和問題という記述がある。これは宮川寅雄(和光大学教授)という人物が書いたもので、「・・・朝鮮戦争は、日本をアメリカの軍事拠点とした。日本は一瞬にして戦争に巻き込まれた。国連軍の名によるアメリカ軍の武力介入は、中国義勇軍の防御的出動をいざない、・・・」とある。この記述が事実とまったく反する事は、論ずるまでもない。これは暴言であり、デタラメである。この記述を見れば、当時の知識人(共産主義者)がいかに偏った歴史認識をしていたかが如実にわかる。つまり日本を共産化しようとしていたのだ。
 もしもこの時、マッカーサーが意を決して日本から物資を調達していなかったらどうなったか、考えてみるまでもない。それこそアメリカ民主党左翼リベラル派(秘密共産主義者)の思うツボであった。また、当時の日本人がいかに井の中の蛙状態であったかが分かる。ある人がこう言っている。共産主義の総本山はクレムリンではない、アメリカのウォール街だ、と。そして、ソ連共産党よりもアメリカの共産党の方が怖い、と。そう、これは現実なのだ。
 シベリア抑留で命を落とした多くの日本人は実に悲惨な状態であったと聞く。その人数はいまもってはっきりしない。旧厚生省援護局の調査では抑留者65万人、死者は6万人という結果があるが、実は200万人(死者20万人)という説もある。犠牲者は日本人だけでなく枢軸国全体にわたり、特にドイツ人が多く(200万人)、レイプは言うに及ばず、語るのもおぞましいしいほどの悲惨さであった。
 捏造の疑いが濃い、南京大虐殺がどれほどのものであったかわからないが、少なくともシベリアで敗戦の辛酸をなめ、凄惨な状態におかれてもがき苦しみながら死んで行った枢軸国側の人の数はこの比ではない。それもこれもアメリカの裏切り者のせいで起きたことなのだ。
 これは世によくある「トンデモ本」の類の受け売りなんかではない。「ヴェノナ文書」の冒頭の部分を翻訳してみると、「第二次世界大戦中、または終戦直後、アメリカ国内でソ連の諜報活動がなされていたという事が、今やっと認識されつつある。さらに優れた魅力ある文章の中で、ハインズ氏とクレア氏はヴェノナ通信の驚く程の証拠を使い、長年謎とされてきた、限定的ではあるが、現実として存在した“攻撃”の目的を明らかにしている。~ダニエル・パトリック・モイニハン~(前ニューヨーク州選出上院議員)」「アメリカの歴史を根底から変えてしまうかもしれない。~ギルバート・テイラー~(著名な映画カメラマン)」
 私は知らない、昔の話だ、では済まされない、悲惨さではないか!
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by meisou22 | 2008-05-11 18:40