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奴隷状態からの脱却は……


by meisou22

武山です21     2008.8.12

 お早うございます。武山です。まさに北京オリンピックたけなわですが、私はいささか落ち込んでいます。なぜかというと、日本の記者・キャスターと呼ばれる人たちの余りの程度の低さに、呆れて果てているのです。昨日、水泳の北島康介選手が世界親記録で100メートル平泳ぎを制し、二大会連覇をなしとげました。彼の偉業は当然称賛されてしかるべきものです。このあと、200メートルも勝てばこれほどの偉業はまたとないでしょう。ですが、ちょっと待って下さい。メディアは少々はしゃぎ過ぎてはいないでしょうか。私には日本のメディアの報道ぶりが常軌を逸しているように見えます。今朝、8月12日の朝刊、スポーツ紙各紙はこぞってこのニュースで一面を埋め尽くしています。私にして敢えて言わしめれば、たかがスポーツです。この異常な取り上げ方は、日本人を意図的に目晦まししているようにしか見えません。何からか? 無論それは世界の趨勢からです。
 それかあらぬか、グルジア情勢は緊迫の度を加えつつあります。日本のメディアを始めいわゆる西側の報道は、アメリカ寄りに偏っています。まるでロシアの方がグルジアを蹂躙し弾圧しようとしているかのようです。しかし、この見方は誤っています。この前お話したように、真実は別のところに存在するのです。しかし、今日はこの問題に深入りしませんが、ただ一つだけ指摘して置きます。昨日のグルジアからのレポートで、日本のグルジア地方の専門家というのが出てきてコメントを述べていたのには、正直言ってたまげました。今回の問題の発端は、南オセチア地方の格差と民族間の不公平感が表面化したものだ、と述べたのです。ちょっと聴きにはなるほどと思わせますが、この地方の専門家の言としてはまったく現実を見ていません。いま世界中のどこを見ても格差のない社会などは存在しません。まして民族間の対立と言えば、それこそすべての国が問題を抱えています。これが原因で一度に数千人も殺すような地域紛争がいきなり何の前ぶれもなく起きるでしょうか。そのうえ、両国の “正規軍” が武力衝突まで起こし、一触即発で大戦争までいたるほどの状態になるでしょうか。この専門家は一体何を考え何を見ての専門家なのでしょうか。まったくひどいコメントです。私にすればこのようなコメントを流すという事自体、意図的に情報操作を行っているとしか思えません。皆さんは、メディアに目晦ましを受けないよう気を付けなければいけません。
 今日はグルジア問題をこれ以上追及するのは止めて、オリンピックの話題に戻します。ご承知の通り近代オリンピックは古代ローマのオリンピア祭を手本にして始められました。その基本理念は、美と健康、平和と友愛、人類のよりよい発展にあるのではないでしょうか。ですが、現在の競技のあり方は、ここらから明らかに外れ、国威発揚と勝負に拘り、興味本位に走り過ぎてはいないでしょうか。その上政治的意味合いもあちこちにちりばめられています。私に言わせれば既にオリンピックはスポーツの祭典の枠を越えてしまっています。ご存知のように、勝負に拘れば最後に笑うものはただ一人です。その一人のためだけにスポーツ競技がある訳ではありません。一人の勝者の陰には幾人もの敗者、挫折者がいるのです。競技はそれらの人を抜きには成立しません。スポーツのすばらしさはその過程にこそあると言えます。
今度のオリンピックで象徴的なシーンを見ました。戦争当事国のグルジアとロシアの選手が、表彰式の壇上で、戦争は我々の友情には関係ない、と抱き合って健闘を称えあったのです。この姿こそ本当のスポーツマンシップと言えるでしょう。
 今日は長くなりますが、もう少しお付き合い下さい。日本人のキャスターの質の低さを象徴するシーンがもう一つありました。今回の水泳の100メートル平泳ぎには、かつての北島選手のライバルであるハンセン選手が出場していました。彼はアメリカでの代表選考大会では調子が悪く、100メートルのみの代表にしか選ばれませんでした。当然、北京でも4位に終わり、随分残念な思いをしたことと思います。事実彼はレース前も後も頭を抱えるしぐさをして落ち込んでいる様子でした。私も若い頃恥ずかしながら平泳ぎの競技選手であった事もあり、調子の悪い時、負けた時の悔しさは人一倍理解できます。その彼を捕まえて日本の若いキャスターは、ねぎらいと慰めの言葉もなく、いきなり北島選手へのコメントはありませんか?  
 と聞いたのです。随分ぶしつけな質問をするもんだなぁ、と聞いていましたが、案の定、彼は一瞬ムッとしながら、「言う事はなにもないよ!」とだけ答えました。キャスターは何も言わず、それっきりです。私はまた日本人の恥をさらしてしまったな……と情けなく思いました。既にレース終了直後、ハンセン選手は北島選手の所に寄って行き、祝福と称賛を贈っていたのを私は見ました。それ以上の何が必要でしょうか。敗者は勝者を称え、勝者は勝って奢らず、互いに健闘を称えあう、それでいいではないですか。
 スポーツはやはりスポーツ以上のものではないと思います。そこにいくらドラマや人間味溢れるシーンがあっても、戦争のように、生きるに命をかけてしのぎを削る事はありません。私はつくづく思う事があります。古代ローマはなぜ滅んだかを。今回の行き過ぎた娯楽性の追及や勝負への拘り、これらは現代社会の衰退を如実に表しており、もはや人類の破滅は近いのではないのか……と。 では。


 ※グルジア情勢の重要性については8月11日付けの「森田実の言わねばならぬ」540 を見て下さい。この戦争が、いかに危険かを氏は如実に述べています。
by meisou22 | 2008-08-13 16:39